徳山ダムの建設で廃村になった岐阜県の旧徳山村(現・揖斐川町)への哀惜を込めて、作曲家の近藤浩平さん(58)=兵庫県宝塚市=が「徳山村の記録」の副題を持つピアノソナタを完成させた。かつてダム湖に沈むのを待つ村を訪れた際、目に焼き付いた荒涼とした風景が作曲のきっかけに。「日本の消えゆく山村の文化を、世界で弾いてもらえるかもしれない『クラシック』のピアノ曲として残しておきたかった」と語る。12月3日に東京都内で初演を迎える。(宮尾幹成)
◆過疎が進む山村に心痛め
登山が趣味の近藤さんは自身を「山の作曲家」と呼び、山や自然を題材にした作品を多く発表してきた。1999年11月、岐阜・福井両県境の冠山に登った帰路に旧徳山村を訪問。既にほとんどの住民は移住を終え、水没する地区の樹木は無残に伐採されていた。
学生時代から足を運んできた山村の多くが、過疎や高齢化で生活文化を維持できなくなっている状況にかねて心を痛めており、この時の徳山の印象を基に作曲に着手。村出身のアマチュア写真家、増山たづ子さん(2006年死去)が村の在りし日を記録した写真集にも着想を得た。
徳山ダムの本格稼働が始まった08年、二つのオーケストラ曲「徳山村の為の哀歌、沈める村」「徳山村の為の哀歌、源流の村」として実を結んだが、実演の機会には恵まれないまま、15年の歳月が過ぎていた。
◆「やおよろずの神を感じさせる」
今回、近藤さんら日本人作曲家の作品を多く手がけてきたピアニスト杉浦菜々子さん(44)=千葉県船橋市=らから「日本を代表するピアノソナタの新作を」と依頼を受け、お蔵入りになっていたオーケストラ曲の素材...
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